書籍「World Class」より
GWのまっただ中、仕事と休みが中途半端な気分なのでブログでも書くことにした。と言っても新しい記事じゃなくて、翻訳。Marc Smith, World Class: Conversations With the Bridge Masters. 1999, http://www.amazon.co.jp/World-Class-Conversations-Bridge-Masters/dp/1894154150/ref=sr_1_fkmr2_1?s=english-books&ie=UTF8&qid=1335758752&sr=1-1-fkmr2
World Classは、トッププレイヤーのことをたくさん紹介している書籍。本人が書いたものもあるし、そうでないものもあった気がする。今、この本は人にあげちゃって手元にないんだな。また読みたくなったならアマゾンで買わないといけない。
その中から、Sabine Auken の章の一部を翻訳したものを紹介する。1965年生まれの、現在の女性ナンバーワンプレイヤー。ドイツ生まれ。パートナーはDaniela von Arnim。一番上がSabine、左側はBob Hamman、右側は Zia Mahmood。HammanとMarmoodは現在パートナーを組み、アメリカのNo1チームに所属している。
ブリッジでは集中力が大切と書いている本をいくつか見たことがあるけれど、私はいつもこの記事に書いてあることを肝に銘じたい(と思っているがなかなかうまくいかないw)。
1998年、マカラン インビテーショナル・ペア戦
マカラン(ロンドン)は世界で真に偉大なブリッジイベントのひとつであり、1998年はトップ3に2組の女性ペアが入ったことで、ことさら特別だった。ここにビューグラフで中継された思い出深いハンドがある。私とDaniela、そして結局は、私たちペアを負かして2位になった英国のNicola Smith、Pat Daviesペアの間で行なわれた試合でのことである。
イーストの多くのプレイヤーが2♣でオープンし、6♣にたどり着いたペア達は、ハートのテナスをなんとか守らなくてはならないにしろ、素晴らしいコントラクトに到達したことを喜んだ。トランプ・リードに対して、彼らは♠Qをアンブロックして♦AKをキャッシュした。
【訳者自身の理解のため補足】Eの6♣へのトランプ・リードに対しては、Wを基準に見るとルーザが♥2♦2であり、ダミーの♠AKで♥2ルーザを消したとしても、♦のルーザ2を1に減らすためには、Wの♦の4枚目♦Jが勝てるようになるか、もしくはダミーでラフできなければならない。よって、♦の分かれが4−2ならば、ドロートランプをせずに、♦AKをキャッシュ後、♦の3トリック目を負けに行った後、Wの最後の♦をダミーのハイ・トランプでラフすれば、あとはトランプを刈り上げてメークすることになる。♦の3巡目はもとからルーザなので、ラフされようが♦アナーで負けようが、どちらでも構わない。)
このような配置のカードで、彼らは次のようなプランを立てた。♦AKの後にもダイヤモンドを続け、最後の♦をラフしトップスペードの下に2枚の♥を捨てるというプランだ。このプランはサウスが2巡目の♦をラフすることにより突然中断させられ、必然的にディクレアラは1ダウンで終わった。
3つのテーブルがイーストの6NTとなり、1つは簡単なハートリードを受けたので成功。それに対して、私の6NTは、サウスが♠4をリードし、ダミーの♠Qが勝った。
【訳者自身の理解のため補足】♠3♥1♦2♣5=11トリックのウィナーがあり、もう1つ開発しなければならない。
私はクラブを2巡キャッシュし、ノースがダイヤモンドを捨てた時、これは5枚カードからのディスカードであると読んだ。そのため私は、クラブを走る前にダイヤモンドを1回だけキャッシュした。サウスは苦しんで5枚目のクラブにスペードをディスカードした時に、私はハンドに戻って♦Kを取り、♠を3ラウンドプレイした。サウスは3巡目を勝つことになるが、ハートのテナスに向けてリードさせられることになった。
【訳者自身の理解のため補足】♣2巡目に、ノースが捨てた♦が5枚からのディスカードだとすると、サウスの♦は1枚ということになる。サウスは♣が4枚、♦が1枚で、♠が4枚以上である。よって、サウスにスローインして♥Kの下からリードさせることができるかもしれない。5枚目の♣にサウスが♠をディスカードしたことで、♠で勝たされたときのイグジット・カードが無くなってしまい、♠4巡目を勝たされてハートをリードせざるを得なくなった。(のだと思う、、、)
私の特別なお気に入りとして、なぜこのハンドを取り上げたかを説明するためには、私のブリッジにおける一番の目標のうちの1つ、について話す必要がある。その目標の1つとは、いったんテーブルについたならば、思考を十分に集中させて、常に自分の能力を十分に引き出せる状態になることだ。私の経験としては、集中がうまくできた時、そして感性が最高潮に調律された時に、うまくプレイができる。また、心に迷いが生じると、ミステイクがこっそりと入り込む。私は集中力を確実に高めるための、魔法の呪文は持っていない。もしそういうものがあるなら、ぜひ聞いてみたい。向上心を持つペアにひとつの良いアドバイスをしよう。テーブル上ではハンドについて決して話し合ってはいけない。パートナーとはもちろんのこと、オポーネントとも(それはより悪い)である。終わったハンドのことは考えてもいけない。それは済んでしまったことであり結果は変わらないからだ。それをすることで取り乱し、次のハンドを台無しにしてしまうことになる。
読者は、世界チャンピオンは、集中するのにそれほど苦労をしないと思っているかもしれないが、私を信じて欲しい。それは間違いである。マカランでのこのスラムハンドは、これまで覚えている中でも最も満足感のあるものの1つだ。なぜなら、そこでうまく集中することができたから。取り乱すことがないよう自らを制御し、目前の難しい課題に集中することにより、私はついに、いくつかの特別な情報を得るための解決方法を思いついた。その情報は、幸運にもディスカードが物語ることから引き出せる情報だった。