娘はほっぽらかし

地元のブリッジのイベントは月に1回あり、年間で大きなイベントは6月と9月にあることから、この2回のイベントの前には何かと準備をしたりして、ウキウキ感があって長く楽しめる。今回は、7月と8月に文部科学大臣杯関連でイベントが入ってくれたおかげで、6、7、8、9月と結構長期間でブリッジを楽しむ気分を味わえてとても楽しい。これまでは、少し大きなイベントがあると準備をするのだけれど、イベントが終わった時点で気分も結果も雲散霧消、祭りのあと、という感じで虚無感が漂い、元気を取り戻すまで少し時間が必要、みたいなことを繰り返していた。

今回は、運良くそういう機会が続いているということもあるが、それだけでなく、ブリッジに臨む自分自身の気持ちというのが今までと少し変わってきている気がして、とてもいいなぁ、と思っている。それはたまたま選考会で勝ったということも1つの要因だけど、その前から少し見えていたものがあって、それが勝利でもう少し味わえる時間が長くなったことで確信に至りそうにある、みたいな。

どんな確信かっていうと、今までずーっと考えてきたことなんだけれど、自分でできないっていうことで、自分で蓋をしてしまったら、それでその先はないな、って感じのこと。そもそもは、ソロバンの暗算からおそらく私のコンプレックスが始まっていて、小学生の時にすでに頭の中にソロバンの珠を仮想的に置けない!って限界を感じて、それは今でもブリッジの中で、見えないハンドを仮想的に頭の中に置いてプレイをシミュレーションする、なんてことは「全く出来ない」という病気にかかっていて、実際まったく上達していない、気がする。

あるところで、「ああ、全然上達してない」とガクゼンとして落ち込んでしまうことをずいぶんと繰り返してきたように思う。でも今回は、ちょっと目先が変わり、上達していない、と感じた時の、比較する状態は冷静に正当な状況となっていないな、と言うことに自分で気がついた。なんか借りてきた視点で今の自分を検査すると、自分でやろうと積み重ねてきたこと自体を自分で全否定してしまうため、残るのは「上達している/していない」の二項対立のみ。そして常にしていない、に落ち着いてきた。

しかし、今回違うのは、日常の中で淡々と練習して、その流れで大会に出て、みたいな、日常の連続ということを実感できていること。不思議だなぁと思う。今までとは違うんだよねなんか。だから勝ったとしてもそれがとんでもなく嬉しいわけではないし、それよりも状態が続いたことが嬉しいという感情。日常の何かを犠牲にして、特別な日に向けて準備をすると、そこに歪が生じてしまってもしボタンを掛け違ったとき、終わった後の後遺症で良くない副作用が出てしまう、ということを今まで繰り返してきた気がする。今回は、それが、ない。

そうすると、そういう意味での焦りがなくて、日常的に、本来自分があるべき姿に近づくことをすればいい、と開き直れるので、じっくり本を読むとか、長期の計画を立てるとかいうことが、無駄だと思わなくなれる。ああ、これは今までになかったことだなぁ。

娘とブリッジで遊ぶことがちょっと少なくなってきたけれど、それはおとうさんのこの感覚がもう少し確実なものになれば、より良い形で娘とのブリッジの付き合いができるようになると思うから、ちょっと待っててね。

競技ブリッジであろうと、和気あいあいと楽しむ親善ブリッジであろうと、今持ちうるすべての力を出し切れば、それで満足であるという価値観は否定できない。逆に言えば勝ち負けにこだわってばかりで面白いか?みたいなことかな。しかし、勝負は水ものなので、どうせ同じ内容ならば勝ちを得たほうがいいに決まってる。勝利という楽しみもまた、格別の楽しみの1つだ、ということも事実だろうし、タイミングよく勝つことは、状況を良好な方面に向かせると実感するね。

今、さかんに身につけようと思っているのは、出ていないカードを数え上げること。1トリックで出た4枚のカードから、きっちり残りの見えないカードを数え上げることで、その後の流れの参考になる。そんなの当たり前にみなやっているよ、と今まで思っていたし、口ではそう言ってたけれど、実際自分はやってなかった。いろんな知識も身につけたいし、力もつけたい。それでも、今なら、回り道に見えるゆっくりなことも、始められそうだ。そしてその視点は、娘にとっても良い環境を差し出すことになるだろうと思う。

そんな落ち着いた視点が自分にあることに気がつくと、他の素晴らしいいろんな活動している人のことが、少し見えてくる。今まで高度すぎて理解すら出来ないと思っていたことが、ははぁ、そういうことか、と少しだけ理解できる気がしてくることもある。

「ソロバンの珠が頭の中で動かせな」かったことを、何か他の違う形でできるようになること、を、いつまでもあきらめない、というのが私の唯一のパワーかもしれない。